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注射器を外来廊下で持ち歩き患者に刺してしまった

2016/08/21

手術の前後には血液ガス測定といって、動脈からの採血で血中に溶け込んでいる気体成分の濃度を測定する検査があります。この血液ガス測定は時間の経過で結果が大きく変わってしまうので、採血から迅速に測定しなくてはなりません。これは、看護師・検査技師が行える静脈からの採血とは異なり、医師が行わなければならない行為です。医師が手術室や病棟で採血します。よって、医師が採血し終わったら、すぐに物品運搬用リフトで病棟から検査室がある階まで降ろし、臨床検査技師が受け取って測定機器にかけるという流れでした。
私が勤めていた病院では、この運搬用リフトが検査室から少し距離があり、外来患者が診察を待っている廊下を渡る必要がありました。

その日は、新人が血液ガスをリフトで送る連絡を受け、リフトの場所まで慌てて飛び出して行きました。「血液ガスはとにかく迅速に」という思いと、手術直後の医師の気迫に緊張したのだと思います。血液ガスは動脈から採血するので、鼠頚部や大腿に深く針を刺します。患者さんの負担もそれだけ大きく、やりなおしは避けるべき検査です。そのため、慣れた者でも「この検体を無駄にしないよう速く」という思いで緊張します。血液ガスは採血管には入れず、注射器のままで検査を行います。注射器には針カバーは付いていますが、届いた時にはずれて針の先端が出ていることもあります。

新人は慌てて廊下を走り、角から現れた外来患者にぶつかってしまいました。その際、少し出ていた先端で患者の上腕を刺してしまったのです。これは明らかな医療事故で、血液が付着した針ですから感染の恐れもあります。すぐにその血液の持ち主がB型肝炎、C型肝炎、HIVに罹患しているか調べたところ、B型肝炎に罹患歴がありました。針を刺された患者は、すぐに抗HBグロブリンを接種され、今後数ヶ月に渡って感染していないか検査を受け続ける必要があり、罹患してしまった場合は長期に渡る治療が必要となってしまいます。不注意だけでは済まされない事態に、患者は弁護士を通し、もしもの場合について病院にその対応を話し合いました。幸い、1年経過しても感染は認められなかったので、針を誤って刺したことに対してだけ慰謝料を受けたようです。

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